乗り物酔いは「動揺病」とも言い、内耳の平衡器官が正常な人に生じ、病気ではありません。身体のバランスは目、筋肉・腱・皮膚、内耳からの感覚情報が大脳皮質(感覚中枢から連合中枢)へと伝達され自分の意志で身体を動かし、または大脳を経由せず脳幹から小脳、脊髄へと伝わり反射的に調節されている。日常生活から得られる様々な感覚情報パターンは中枢神経系内に蓄積され種々の状況下に適合していると言われている。内耳の平衡器官である前庭迷路では地球の重力方向、それに対する頭部の傾き、また頭部の前後・左右・上下方向の直線運動や回転運動を感知し、ここの刺激のされかたが動揺病の主要な原因となる。乗り物酔いは各自の日常では経験しない異常な刺激が前庭迷路や視覚から入り、以前からの中枢神経系内に蓄積されている感覚情報パターンと異なるため情報が混乱し中枢神経系で統合制御できず、自律神経が異常に興奮すると言う健常人の一時的な異常生体反応と考えられている。
 症状としては唾液分泌増加、顔面蒼白、冷汗、心窩部違和感、胃部不快、吐き気、嘔吐、頭痛、眠気、めまいなど自律神経や中枢神経症状を呈す。
動揺病は人により感受性に差があり、一般に乳幼児や高齢者は酔いにくく、女性の方が酔いやすい。対策は、自律神経症状を抑える、中枢の覚醒度を高める、乗り物への慣れ、乗る前の体調調整、頭部の揺れを防ぎ視線の固定化が大切。具体的な予防法として乗る前は十分な睡眠をとり、起床後すぐ出発せず頭をすっきりさせる、空腹は避け軽食をとり、疲労やアルコールを避ける、酔い止め薬を服用する。乗っている間は揺れの少ない場所に位置し、背もたれのある硬い椅子にシートを倒し着席し、本を読まない・近景をみない・閉眼などで視覚刺激を避ける、換気性の悪い・混雑した乗り物に乗らない、合唱・ゲームなどで気分を紛らわせる。酔ってしまったら途中下車が良いが、ネクタイ・ベルトなど衣類をゆるめ、外気に当たって楽な姿勢で寝る、酔い止め薬の服用。また普段から訓練療法をするのもよい。前庭迷路には鉄棒・ブランコ・シーソー・平均台・跳び箱・エレベーター、視覚には野球・テニスなどの球を追う、自律神経機能鍛錬として乾布摩擦・薄着・水泳なども効果的。

ホームへ戻る