舌下免疫療法

通年性アレルギー性鼻炎に対するダニ舌下免疫療法--ダニアレルギーを根治に導くことが可能な治療法---

 通年性アレルギー性鼻炎の症状は季節に関係なく連続する「くしゃみ」、「鼻水」、「鼻づまり」や「鼻・眼のかゆみ」などが免疫反応の結果現れます。原因物質(アレルゲン)は室内塵に含まれているダニ(ハウスダストマイト)、ペットの皮脂や唾液、昆虫などがアレルゲンとなり得ます。これらの中でヒョウヒダニ(虫体および糞便中の酵素がアレルゲン)と呼ばれるダニが重要なアレルゲンで高温多湿の環境下で増殖しやすく小さいので肉眼ではほとんど確認できません。ダニが一定以上増加した環境で生活を続けるとアレルギー性の鼻炎や喘息を発症すると言われております。通年性鼻炎の治療は、@アレルゲンの回避・除去A薬物治療B手術療法Cアレルゲン免疫療法があります。一年中ダニのない環境での生活は困難なことが多いのが現状と思われます。
●アレルゲン免疫療法とは?舌下免疫療法は画期的な経口薬です
 アレルゲン免疫療法はアレルゲンを長期間投与する事でアレルギー反応が抑制される体質に変えることを目的とした治療法です。服用中のみ効果がある薬物治療とは全く異なり根治を期待して行われます。日本では50年以上前から注射での「皮下免疫療法」が実施されており、免疫療法自体が新しいわけではありません。「皮下免疫療法」の欠点として治療開始暫くは頻回の通院を要し、注射痛と頻度は少ないですが重篤な全身性の副作用が起こり得ます。代替法としてこれら欠点を改善し新たに保険適応(2015年5月)になった「舌下免疫療法」は医師の指導のもとに自宅で行う舌下服用薬での治療です。薬の投与経路を舌下粘膜に変えたことで副作用が軽減し、経口薬なので治療継続がしやすくなりました。アレルギー患者数が非常に多いにもかかわらず、画期的なこの薬剤の恩恵を受けている人はまだ非常に少ないと思われます。知らない人が多いのかもしれません。免疫療法は体質改善を目指す唯一の根治療法です。
●免疫療法は5〜6年先の将来につながる治療です
 この治療はダニよるアレルギー反応を起こしにくい体質に徐々に変えてゆくものです。短期間で体質は変わりません。具体的には小量のアレルゲン(アレルギー原因物質)を舌下の粘膜に接触吸収させることを毎日繰り返します。体質が変わるとはある時期から治療前は小量のダニ抗原が鼻に入るとすぐ症状が誘発されていた人が2倍まで症状がでない、さらには多量の抗原が入らなければ症状が出ない体質に改善されることを意味します。つまり日常生活に支障がない体質に変わります。

●ダニ合併花粉アレルギー患者さんにも効果が期待できます

完全なダニのない環境での生活は困難なため通年性に絶えずダニアレルゲンを吸入しており症状はなくてもダニアレルギーの人の鼻粘膜では軽度のアレルギー性炎症反応を常に起こしております。この様な人が花粉アレルギーを合併していると小量の花粉飛散でも発症することとなります。ダニアレルギーが改善すると花粉症の軽減効果も期待できます。今の治療に不満な方は治療が受けやすくなった「舌下免疫療法」を受けてみてはどうでしょう。 

●ダニ舌下免疫療法の効果と安全性
 治療効果は「皮下免疫療法」では20〜25%が根治的、60〜75%が有効、10%が無効例ですが、「舌下免疫療法」でも効果はほぼ同等と思われます。
根治しない方でも@対症療法薬剤の減量効果A長期治療終了後の効果持続B新規アレルギー発症の予防効果と感作の抑制C喘息発症抑制効果Dダニ単独アレルギー例での高い効果が期待できる治療です。また重症な副作用は「皮下免疫療法」と比較して非常に少なく、「舌下免疫療法」でのアナフィラキシーは10例ほど報告されておりますが完治しております。大部分の副作用は局所反応で口腔内の腫れ、痒み、不快感などで治療継続により徐々に出なくなります。
●ダニアレルギーの方に推奨される治療法です
 治療対象者はダニアレルギー性鼻炎の方で年齢制限はありません。β遮断薬服用中、妊娠・授乳中、薬物治療によっても安定しない重症喘息、ダニで全身性副作用の既往、服薬遵守出来ない方、悪性腫瘍や全身性免疫疾患などの方は治療できません。舌下免疫療法は短期で効果は現れず3〜5年間(症状が無くなっても最低4年間継続を推奨)は毎日服用を継続しなければなりませんが根治に導くことが可能な唯一の治療法です。自分に適する治療かどうかはアレルゲン免疫療法を実施している耳鼻科専門医にご相談下さい。私は耳鼻科医になってからずっと実施しておりました「皮下免疫療法」を止めて平成30年4月からは全て「舌下免疫療法」に変えております。                        

 

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