耳鳴は未だ有効な治療法は確立されていない。耳鳴りの発生機序が全く推測の域を出ていないことや、耳鳴りの他覚的検査法が確立されていないことが原因です。近年、欧米を中心としてTRT(tinnitus retraining therapy)や心理療法をはじめとする耳鳴りに対する対症療法が体系化されてきています。 外部に音が存在しないのに音を知覚するのが耳鳴です。内耳の一部分である蝸牛(有毛細胞や蝸牛神経)が発生源となって耳鳴りが始まる事が多いと言われております。耳鳴の大部分は自覚的耳鳴で聴覚の神経経路のどこかに発生した異常興奮であると考えられ本人のみ知覚できるものです。そのほか他覚的耳鳴と言って頭頸部の血管狭窄や動静脈瘻で血流の雑音が脈拍に一致して聞こえたりまたは口蓋筋や耳小骨筋の痙攣による筋性耳鳴りがあります。また発症の時期により、急性耳鳴慢性耳鳴に分類されます。前者の原因となる病気には、突発性難聴、メニエル病、急性低音部障害型感音性難聴、音響性難聴、外リンパ瘻などがありますがそれぞれの病気の治療で治ることもあります。しかし3ヶ月以上持続する慢性耳鳴には内耳の損傷によると考えられる老人性難聴、脳血管の動脈硬化、頸椎変形、糖尿病、高血圧や上記急性疾患の原因による慢性耳鳴はなかなか消失しません。耳鳴の検査としては聴力検査、耳鳴の高さと大きさの検査、X-P、CT、MRIなどがあります。耳鳴りの重症度により次の様な治療を選択して行います。耳鳴りの治療には内耳機能の改善と耳鳴抑制を期待する薬物治療(ビタミン剤・ATP製剤・漢方薬・抗不安薬・抗うつ剤)、ステロイドやキシロカインの鼓室内注入、バイオフィードバック治療(精神的ストレスと筋緊張の改善を目的とする)、マスカー療法(耳鳴りに似た雑音を聞くことで一時的に耳鳴が改善)、補聴器(難聴のため聞こえない環境音を聞こえるようにして耳鳴を遮蔽)、内耳電気刺激、キシロカイン静注などが有りますが確実なものはありません。ここ数年注目されている治療法としてTRT療法(Tinnitus Retraining Therapy耳鳴順応療法)があります。私達の耳にひっきりなしに届く音が過剰で有れば、ときおり誤った情報が聴覚路を通って脳に届き、それが引き金となって脳の中で「バーチャルサウンド」を知覚するフィードバックループを形成することになります。この最初の誤った情報が一瞬のものであれば、この音はすぐ止みます(一過性の耳鳴)。だれでも睡眠不足や疲れたときにこのような瞬間的な耳鳴りを感じることがありますが、これは心配ない一過性の耳鳴りです。この最初の誤った情報が継続し知覚され続けるようになると、このループは自己増幅し、最初の情報が止んだ後にも耳鳴が続くことになります。このように、耳鳴は脳の内部でのみ発生する現象で脳の内部で増幅したものが耳鳴です。この様な根拠にもとずき、脳を耳鳴の音に順応させるようにする訓練法です。耳鳴の理解、心理学的カウセリング、リラクゼーション、TCI(サウンドジェネレーター、耳鳴を制御する機器)の装着で約80%が改善すると報告されております。TCIは高価なのが欠点ですが忍耐や努力はほとんど必要はありませんので試してみる価値は有ると思われます。なおTCIの価格は現在63000円です。

《 コメント 耳鳴に対するTRT療法は従来の治療法の概念を変える方法で適応が正しければ75%の改善率はたしかですので耳鳴りの方はご相談下さい(私ははじめ30%の効果があればとおもっておりましたが)、TCIその物は一見高価と思っておりましたがTCI治療中は殆どの人は薬は服用は必要ではなく月に1〜2度の通院ですので結果的には安いと思います。》

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